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アイエム 歴史上の偉人のお話
No.5 「背水の陣」~なぜたった数千の韓信軍が二万の趙軍を破ったか~
紀元前二百四年、中国の天才的名将・韓信が黄河の守りを突破して、魏王と代の宰相・夏説を生け捕りに。連戦連勝、破竹の勢いで趙国に進撃しました。
「いかに韓信の兵が強くてもたかが数千に過ぎない。しかも本国を離れること千里の遠征で、兵も極度に疲労している。正々堂々、一撃で勝ってみせる」
と、趙の将軍・成安君陳余は二十万の大軍をもって韓信の軍を迎撃しました。
確かに実情は成安君陳余の言う通りでしたが、彼は韓信が用兵の天才であることを見逃していました。そしてこれが彼一代の不覚となりました。
韓信は兵を河向こうに進めて、世に有名な背水の陣を布きます。これを望見した趙の将兵は、その原則外れの配備を嘲笑したそうです。河川の付近で
防勢をとるには、河川を敵の威力をそぐ障害にするために、河川の後方に陣を構えるのが常道だからです。それがどうしたことか、河川の前に軍勢を
配備しているのですから、これはもう勝ったも同然と思った趙軍。全力をあげて攻撃に出ました。
ところが後に大河を控えて逃げることのできない韓信軍は必死の抵抗を続け、趙軍は苦戦します。ひとまず引き返そうとしたところを前後から
挟撃されて、たちまち崩壊してしまいます。将軍の成安君陳余は惨殺され、趙の王は捕らえられました。
後日、なぜ原則外れの背水の陣をとったのか、と問われて韓信はこう答えたそうです。
「なるほど水を背にして陣をとるのは自らの退路を絶ち、最も危険な態勢ではあるが、それだけ必死になる。正規軍のほとんどを本国に引き上げられた
我が軍の主力は、占領地で徴集した新兵ばかりで、残念ながら烏合の衆であった。後に河がなければ、みな逃げてしまうであろう。
背水の陣を布かざるをえなかったのである。彼らは逃げ場がないから必死に戦い、とても勝ち目のない戦いとみえた趙の大軍を潰滅させることが
できたのである」と。
この答えになみいる将星は感服したそうです。逃げ場がないから必死に戦う。
決死の思いは、すべての道を開くということを教えてくれました。
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