明るい豊かな未来のために暮しを豊かに。
@道を守って生きるものはどうしても孤立する。だが、それは一時の事。
権力に盲従し続ければ居心地は良いだろうが、いずれ孤独が訪れる。
道を極める物は物の外見にとらわれずにその裏側にあるものを求めるものだ。
一時の寂しさで将来の後悔が起こるような軽率な事をするべきではない。
A経験が浅ければ、手を抜く事を良く知らない。
深く経験を積むと、どうしても型にはまりがちだ。
よって、何事にも潔癖であるよりも、多少は癖があり
何事にも丁寧であるより少しばかり豪快な方が
人の上に立つものには向いている。
B青空のように、太陽のように、上に立つものはその意志を
だれにでも明白になるよう示さなければならない。
秘蔵の宝のように、上に立つものはその才能を
必要なときにだけ発揮し、ひけらかすべきではない。
C勢いがあり富貴な者に理由なく近づかない者は潔癖である。
しかし、近づいても節度を守り同調しない事が最も潔癖である。
手抜きで、適当に仕事をこなす術を知らない者は高潔である。
しかし、それを知りつつもそうしない事が最も高潔である。
D耳にする言葉はいつも厳しい批判であり、
する事成すこと上手くいかないときもある。
しかし、その苦しみこそが自らの修練の砥石となる。
いつも都合の良い事ばかりで、
する事成すこと全てが思い通りに行く事もある。
しかし、それは毒に浸かっているようなもので
いつかその身に災難が訪れる事だろう。
E 激しい風雨に、鳥たちはその脅威を恐れ
穏やかなる光と風に草木は喜びを表す
天地は常に変わりゆき、常に嵐を吹くわけではないように
人々は一日に一度も喜びが無い事があってはならない
F濃い味、甘さと辛さに彩られた料理は妙味が判らない
薄くてごまかしの利かない中に本物の味が存在する。
ただ仕事が出来る人が信用する価値のある人ではない
本当に信用するに値する人は、常日頃で価値を示す。
G天地は常に静けさを保つも、その活動は永遠である。
太陽と月は休むことなく運営し、その光は変わらない。
このように、君子は静かなる中にも緊急の心得を持ち、
どんなに忙しくても常日頃の余裕を持っているべきだ
H深夜、静寂の中で己の心と向かい合おうとしたならば
自分を追い詰めて、初めて本当の心と向かい合うだろう
その瞬間こそが、自分という正体を得る時である
そして、本当の自分自身を見出したときには、改めて
己のことを心の底から恥ずかしく思うことだろう。
I災難や失敗は、その対極にある時にやってくるものだ
万事調子の良い時ほど気を引き締めなければならない
失敗続きでも、突然道が開けたりするものだ
上手く行かない時の最悪の選択は諦める事である
J粗食で腹を満たすものは、清く氷のように澄んだ心を知っている
美衣美食に飽きたものは、その心のあさましさすら忘れている
「志」とは飾り立てないで、初心たる澄んだ心に宿るものであり
贅沢に甘えていると節度までもが失われる
K生きている間は、寛大に、人の嘆きを消すような人でありたい
死んだ後は、持っている全てを捨て、人の役に立たせたいものだ
L狭い道では、一歩譲って先に人を渡してしまえば良い。
美味いものを前にしても、3割は他人に譲ってしまおう。
このような心がけは、自他ともに世の中を安泰にする手法である。
M立派な人物への近道などない。くだらない欲望を捨て去ることが
できれば世間には認められなくてもすでに立派な神仙の領域にある。
学問を極める為には苦労に勝るものはない。世間の雑音を
見極める事ができれば、知識の程度がどうであろうとも、賢者である。
N侠気(正義を守り、弱いものを助ける心)を持たないものは
自分自身に必要な友情を作ることは出来ないだろう。
また、素直な気持ちや純粋な気持ちを忘れてはいけない。
そのような気持ちを失ったら人としての成長は望めない。
O利益を得ることは人に遅れても構わないが
自分を磨くことは他人に遅れをとるべきではない
己の分を越した報酬を追い求めてはいけない
追い求めるのは己の修業と奉仕であるべきだ
P 世間を渡るには、一歩譲るような心を持っているべきだ
その一歩に何かを感じ、新しい歩みの地盤とすることができる
他人を待つときには、一分でも長く待っているべきだ
他人に利益を与えることは、自分の利益として還ってくる
Q世間を感服させる功績も、鼻にかけては価値を失う。
天をも恐れぬ大罪も、心から悔い改めれば清算できる。
R功績や名声は独り占めするべきではない。他人と共有することで
羨望や嫉妬などの邪なる感情から身を守ることができるようになる
失敗や汚名は、決して他人に投げつけてはならない
自らに抱え込むことによって、その身を磨く教訓とすることができる
S物事に対して、余裕を持ちつつも油断せず、完璧を棄てれば
外部のどのような影響であっても抑えることが出来るだろう。
たとえ天地の異変をしてもそう簡単に覆るものではない。
もし、何かするには必ず完璧でなければならないと考えて、
自分の挙げた功績は必ず報われなければ気が済まないと言うならば
内部から崩壊するか、外部からの揺さぶりによって台無しになるだろう。
21.真に仏の輝きを放つのは家庭であり、真の道は日頃の中にある。
一家が喜びの中にあり、穏やかで平和で、互いを思いやる暮らしは
他のいかなる喜びに比べてもその価値は比べられるものではない。
22.活動的過ぎると雲を渡る稲妻、風に吹かれる灯火のようで落ち着かない
しかし、静か過ぎると燃え残った灰、枯葉が散る冬山のようで寂しい。
動かない雲間を鳶が飛び、静かな水の中を魚が泳ぐように
動と静が同時に存在する境地こそ、めざすべき道である。
23.他人の欠点を指摘する際、あまりに厳しすぎてはならない。
指摘された側が素直に受け入れる程度を考え、特に配慮する必要がある。
他人を指導する際は、多くの事や難しい事ばかりを求めてはいけない。
指導される側が理解して、行動できる内容でなければ意味がないからだ。
24.汚れた土にまみれた虫たちも、育てば蝉となり秋の空に露を飲む
腐った草の中に育つ虫たちも、育てば蛍となって夏の空に光り輝く
このように、綺麗なものは汚い物の中から生まれ
輝くものは暗き闇の中から生まれるものである。
25. 驕りや激高は、すべて勢い任せに事を成し遂げようとする行為と同じだ。
この見せかけの勇気を捨てたら、初めてその人に有益な経験となる。
欲望や慢心は、すべて迷いの心から生じるものである。
迷いが解けた時、はじめてその人の本当の人となりが見えてくる。
26.満腹になれば、食物の味が良いか悪いかなど気にしなくなる。
恋人がいたとしても、ずっと一緒にいれば最初の頃の情熱は薄れる。
誘惑に出会う時は、物事が過ぎた時の空虚を思い出すべきだ。
そうすることによって物事の真偽を見失うことは無いだろう。
27.表舞台にいるときは、静かな山林のように冷静さを持つ必要がある。
裏方にいるときは、現在の状況を詳しく把握しておく必要がある。
28.世の中では、無理に功績ばかりを追い求める必要は無い。
失敗を減らすことも立派な功績である。
人間関係では、恩を施しても感謝を求めてはいけない。
恨まれない事はうわべに感謝されるよりよほど良い。
29.努力はすばらしい事だが、そのために苦しむばかりでは
結果への喜びも失せて、過程と目標が逆転してしまう。
何事にも冷静なことは良い事だが、あまりに冷静すぎては
他人に軽蔑されたりして、世間の役に立つことはできない。
30.行動が行き詰まり、どうにもならないときは原点を思い出そう。
成功を収めて頂点を極めたら、その引き際を考えなければならない。
31.富貴の家に育った人は、特に他人に比べ寛大で暖かくあるべきだが
実際には疑い深くて不人情であることが多い
これは身が富貴であってもその心に満たされるものが無いためだ
これでは、いずれ天の時に見捨てられてしまう
才能に恵まれた人は、特にその才能を誇示するべきではないのだが
実際にはここぞとばかりに才能を見せつけようとする事が多い
これは才能があっても能力の使い道を見失っている愚人のようだ
これでは、成功を望むのは難しい。
32.下にいる者には上にいる者の責任は分からない
暗闇の中に居なければ光の明るさに気付かない
落ち着いていれば騒ぎ立てることの無駄さが分かる
静かに考えれば騒がしいことのうっとうしさを知る
33.成功や金儲けに目が眩まなくなれば、凡人ではなくなる
道徳や仁義を心に意図しなくても叶えば、すでに聖人である
34.金に目が行くことは、必ずしも心に問題があるとは限らない。
本当に問題なのは、偏見してしまうことである。
恋色沙汰に心奪われる事は、人の成長を妨害するとは限らない。
それよりも問題なのは、思い込みを絶対視することである。
35.人の心は変わりやすいし、世渡りは曲がりくねりばかりだ
容易に通れぬ道では、待って他人を先に渡せばよい。
楽な道でも、三分は退いて通りやすくしておくと良い。
36.つまらない人間を忌み嫌うのは簡単である
しかし、愛情を持って接し続ける事は容易ではない
立派な人間と接する際にかしこまった態度でいるのは簡単だが
卑屈にならずに正しく振舞うのは難しいことである。
37.利口に振る舞うより、無骨でも素直であるべきで、
自分の本分を見失わずにこれを天をも貫く志とするべきだ。
華々しい生活など捨てて、あるべき素朴に過ごすべきで、
その生涯のあり方を天地に刻み込んで残すべきだ。
38.悪事を振り払うには、まず自らの心に打ち勝つことだ
そうすれば、いかなる悪事であっても退散させることができる
誘惑を抑えるには、まずは自らの心を抑えることだ
冷静にいれば、外部からの干渉を冷静に処理できる。
39.弟子の教育は愛娘を育てるようなものである。
最も大事なのは交友関係で、ひとたび悪の道へと導かれると
きれいに耕された畑に雑草の種子を落とすようなもので、
そうなれば完全に取り除くことは至難の一語である。
40.いかに容易であっても、無駄な欲を満たすために行動してはいけない
一度深みにはまってしまえば、さらに多くの事を求めるようになる
正義を貫く場合は、どんなに難しい状況でもあきらめて退いてはいけない
一度引っ込むと取り返すのは幾千の山を越えるより難しくなる。
41.基本的に細やかな性格の人がいる。自分自身が
何事にも丁寧で、他人に接しても非常に丁寧ではある。
逆に、何事も大雑把な性格の人がいる。
自分自身だけではなく、他人や物事に対しても雑に接する。
どちらにしても、極端すぎる事は好ましくないことである。
人の上に立つものはあまり極端ではいけない。
42.富貴なる者には仁を持って接し、権勢には義を持って接す。
このように、人を導く者が金や権力に振り向いてはならない。
最終的な目標を見失わなければ、自然と心もその意思に従う。
決して周辺の影響に迷うことは無い。
43.教養を得るときには、より高い一歩を忘れてはいけない。
立ち止まると、着物に埃がつき、新しい靴で泥の中に踏み込む
ようにその価値を失わせる。
世の中では、一歩退く心を忘れたら、飛んで火に入った蛾や、
垣根に角を挟み、進退窮まった牡羊のように、行動した後に
取り返しのつかない後悔をすることになる。
44.教養を身につけるとは、心を一つにして自らの選んだ道を進むこと
功名や手柄を目的として学問をする事を、修練とは言わない
身に付いたとしても、理解ではなく知識としての存在では
風流事の役にすら立たない。
45.慈悲の心は誰にでもある。菩薩にも、殺人者にも。
それと同じように、人生の楽しみはどこにでも存在する。
豪華で贅沢な暮らしだの、貧しくて苦しいなどは関係ない
その楽しみを楽しむことができるか否か次第である。
欲望や感情が過ぎると、目の前にある事実すら見えず、
手の届く幸せもはるか遠くの夢に見える。
46.己を鍛えるためには、樹木や石像のように動じない姿勢が
重要である。目前の誘惑に振り回されているようでは欲を乗り越えることは困難である。
天下の政治もこれと同じで、流水浮雲のように悠然として捕らわれないような心構えを持つ必要がある。
一度欲に目が眩むと、たちまち国全体が危険に陥る。
47.常に心構えの良い者は、日頃から穏やかな暮らしを作り
夢の中でさえ幸せでいることができるだろう
常に心構えの悪い者は、行動が問題となることが非常に多い
その雰囲気は、笑いながら話すとしても相手に対して
威圧感、嫌悪感や不快感を与える
48.肝臓の不調は目に現れ、腎臓の不調は聴力に現れる
病は目に見えないところで発生し、目に見える効果を表す
だから、人前で恥をかきたくなければ
常日頃から過ちを犯さないよう注意する必要がある。
49.何事もないより幸せなことはなく欲望が多い事ほど不幸なことはない
さまざまな苦労を積み重ねるほど何もない事の幸せを知り
心が平穏になってこそ欲望の多い事の不幸を知る。
50.秩序の時代には、正しい姿勢を持って生きるべきで
秩序の乱れた時代には、他人に憎まれないように生きるべきだ
息詰まる時代には、正しい心を忘れず、他人と協調すると良い
善い人と接するときは、これを信じて寛大な姿勢でよいだろう
善くない人と接するときは、これを信じずとも姿勢には出さず
普通の人と接するときは、信じつつも疑う心を忘れないべきだ。
51.他人の功績は見ないで忘れてしまおう
しかし、自分の失敗は忘れてはいけない
他人に与えた恩は忘れてしまおう
しかし、他人から受けた恩義は忘れてはいけない。
52. 人に恩を施す時は、自分の評価を考えず、報恩を求めなければ
わずかな施しであってもその価値はとても高価である。
己の利益を前提に人に利益を与えたり、対価を求めるようでは
どんなに大きな施しであってもその価値は無に等しい。
53.人の置かれている状況は千差万別、良い所もあれば悪い所もある。
どうすれば、自分だけに完璧な環境を求め、達成することができるだろうか。
人の感情はさまざまで、常に道理に叶う思考をする訳ではない。
ましてや、全ての人々を道理で判断し、従わせることはできない。
ただ、この事を忘れずに、かつ利用するのは一つの手段である。
54.心が穏やかになって、はじめて書を読む意味が生じる
穏やかではない者が書を読むと、書に生きる偉人の心を
己の利欲の為の手段としたり、立派な言葉や行動を
己の欠点を取り繕う口実にしたりするものである
これでは、侵略者に力を与え、賊に食料を与えるようなものだ。
55.ぜいたくな暮らしは、満足の基準が高すぎて常に満たされない
ならば、質素でも余裕を楽しむ生活のほうがよほど良い
有能な人はどんなにすばらしい仕事をしても誰かから恨まれる
これをうらやむより、普通に泰然なる生活をするほうが良い。
56.本を読んでもその中身を考えなければ、文字に束縛される
人と民とを愛せない役人は、ただの税金泥棒である
学を重ねても、実践が無ければ口先の役にしか立たない
事業を立てても、人の為でなければ一時的な夢になる。
57.全ての人の心の底には、必ずその人の文章が存在しているが
知識や世間のような下らない断片に縛り上げられている。
全ての人の心の底には、必ずその人の奏でる音楽が存在するが
他人や身分のような魅惑のする邪によっさえぎられている。
学問とは、それら外部から来る悪影響を除き、掃くことで
埋もれている自分自身を探すことに始まり、
それを活用することに発展する。
58.苦労の中にこそ、本当の喜びが存在する。
調子が良い時ほど、心を引き締めなければ
失敗した時の悲しみはとても大きいものになる。
59. 優れた人格によって得る地位や名誉は、山野に咲く花
特に手を加えなくても、自然と鮮やかに咲き誇る
功績によって得る地位や名誉は、鉢植えの花
その人次第で、咲き誇るもあり、枯れ散るもあり
権力によって得る地位や名誉は、花瓶に咲く花
見ているだけでもいずれは枯れゆく。
60.春がきた時、花は一斉に咲き誇り、鳥は楽しげに歌う
官吏に就くことができた人々も喜びの時を迎える
しかし、仕事につくことが目的で、それで終わってしまうようでは、
たとえ百年生きても一日だけ生きても全く同じ事である。
61.道を修めるには、向上心と慎重さが重要なことは明白だが、
時には一息入れて、余裕を楽しむ心が必要である。
常に緊張と潔癖をもって学に志す事は、秋の暮れのようなもので
春の風が吹かなければ、何かが育つ機会を失う。
62.本当に清廉潔癖な人は、潔癖な人などという評判は立たない。
評判にあがるということは、名誉欲の気を読まれている事だ。
至高の技を持つ人は、敢えて変な細工などはしないものである。
妙に細工にこだわるのは、技の真の価値を隠そうとする心である。
63.水を満たせば倒れる器、一杯になると壊される貯金箱
人生とはこういうものである。
よって、君子たるものはお金を欲張ることなくあるべきで
多少は不完全な状態にあるほうが良い。
64.もし、いまだに名誉や実績に縛られる心が残っていれば
たとえ清貧の生活にあっても、俗物に囚われていることと同じだ
人のために行動を為す事に報恩を思う心が抜けなければ
どんになに人の役に立っても、結局は利用するための手段である
65.心がしっかりとしていれば、闇の中でも進むべき光を失わない
心に曇りがあれば、進むべき道を示されても誘惑に迷う。
66.人々は名誉を得ることの喜びばかりを学び
名誉や利益を離れた楽しみこそが至高なものだと気付かない
人々は、貧しさによる飢えや寒さばかりを不幸と思い込み
富貴の人の尽きない欲の不幸な苦しみを思わない。
67.悪事をしても、それが公になることを恐れている間は
悪人とはいえどその心にはまだ光が残っている
善行を積み重ねても、その評判が広まることを楽しみに
するようでは悪の道に向かうようなものだ。
68.運命を定める公式は存在しない。自由と思うと不自由で
不自由と思うと自由になったりする。
この気まぐれの前には、英雄であっても振り回されて
豪傑であってもつまづいてしまう。
しかし、いかなるときも緊急の心と平穏の心をもつ
君子には、いかに天の神であっても手の下しようがない。
69.せっかちは火の相。焼き尽くすような勢いだけで物事を仕損じる。
冷酷なのは氷の相。すべての人の心を凍らせ、物事を止めてしまう。
強情なのは溜まり水や旧木の相。活力なく、物事を衰退させる。
いずれも有意義な仕事をするには不適な相である。
70.幸福は求めて得ることができるものではなく、
喜びのあるところに自然と集まってくるものだ
災禍は避けようとして避けれるものではなく、
他人を傷つけるような行動を慎み、災禍の発生を
抑えるように心がけることしかできない。
71.十の予想が九つ当たっても、それほどたいした事ではないと扱われる
その上に、ひとつでも外れたらあちこちからその責任を問われる。
十の計画を立てて九つを達成しても、功績になるとは限らない。
一つできなかったという理由で責任を問われる。
よって、君子はどっしりとして静かで、落ち着きがあるべきで
変に器用に見せるよりは不器用に思われているほうがよい。
72.春の暖かさは万物を育て、冬の寒さは万物を枯らすように、
性格が冷淡な人間は幸運に恵まれる機会が少なくて、
心穏やかで柔和な人は幸せに巡り会う機会が多く
その幸せが長続きするものだ。
73. 真理の道は広々としている。一途に道を目指すだけではなく
時には道端を選ぶと、心の中が晴れやかになれるだろう。
人の欲の道は非常に狭い。わずかでも心を踏み外せば
行き着く先はイバラの道か、泥沼の苦しみである。
74.苦しんだり、楽しみながら修練に志してつかんだ幸せは
ほんとうの幸せであり、永久にその幸せを感じるだろう
疑ったり、信じたりしながら考え、心から信じた知識は
初めて、知恵として、真実となるだろう。
75. 人の心は謙虚さを無くしてはいけない。
謙虚であれば、大義と理性が宿り来る。
人の心は空っぽのままではいけない。
空きがなければ雑念は入り込まない。
76.きれいではない土に作物はできるが、
とてもきれいに澄んだ水には魚は住まない。
君子は、汚れたものでも受け入れ、扱う度量が
あってこそ大人物となれる。
潔癖だと、本当に誰も寄り付かない。
77.己の欲望に心を支配されると、強い意志は骨抜きになり
理性は曇り、恩を忘れ恨みを思い、良識は汚れ、
その人格は他人を見下して品性を完全に失う。
古くから、「無欲こそが最高の宝」と言われているが
これこそが、まさに世の中の汚れを越す手段である。
78.自らが触れた事象でも、外から来る刺激は外側から来る賊
自らの頭の中に浮かぶざまざまな雑念は内側から現れる賊
しかし、自らの心が己の真理によって揺るがない状態を保ち
ひとり静座して自らを見つめなおす。
こうすることによって、ようやく万事は自らのための情報となる。
79.まだ予定の段階にある物事に没頭してはいけない
すでにある物事を行う方が優先されるべきだ
過去の失敗はどんなに悔やんでも仕方がない
それよりも将来の過ちを防ぐことを考えるべきだ。
80.理想は高く。しかし現実の範囲内で。
思考は綿密に。しかし些細なことにこだわらず。
趣味は淡白に。しかし偏りすぎてはいけない。
節操は厳しく明白に。しかし過激さは無用だ。
81.竹やぶに風が抜けて、笹が鳴った後は再びの静寂
雁が淵を渡るときに影を映すが、飛び去れば影は消える
君子の心は事があって初めて形を成すようにあるべきだ。
何事もなければ空。事が過ぎ去れば空。
82.潔癖でも寛容、人情家でも決断は速くて正確
聡明だが寛容、一本気だが無鉄砲ではない
「甘すぎない蜜、辛すぎない塩味」とは言うが
これこそが理想と言えるだろう。
83.あばら家でも家をきれいに保ち、
貧しい家の娘でも髪をきちんと整えていれば
つつましき趣があるものだ。
人として恵まれない時期があっても、
現実に屈服して自分を捨ててはいけない。
84.暇だからと無駄に日を過ごすことがなければ、
忙しくなったときにその効果が現れてくる。
何事もない日に必要以上に精神を緩めなければ
何らかの活動が必要になったときに効果が現れる。
人目に関わらず裏表なく過ごしていれば
公の場に立つときにその効用が現れる。
85.己の考えがわずかでも私利私欲に流れていると感じたら
すぐにその考えを改めて、正しい道へと戻すべきだ。
迷いが起こり、気づいたらすぐその迷いをほぐすのは
災いを防ぎ福を呼び、危険を遠ざけ安全を呼ぶ最初の歩である。
これを安易に投げ出したり後回しにしてはいけない。
86.心が静かなときの思考は澄んでいるので、心の本音を観ることができる
心が落ち着いている時は感情が穏やかで、心の動きを観ることができる
心が淡々としている時は情緒が安定して、心の感情を味わうことができる
自分の心を見直して、真理を見るためにはこれらが良い手段である。